
生成AIで何ができる?業務で使えること・苦手なことを分かりやすく解説
「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」や「生成AI(Generative AI)」という言葉を、ニュースやビジネスの現場で目にする機会が増えています。業務への活用に関心はあるものの、「自社では何に使えるのか」を具体的にイメージできていない方も多いのではないでしょうか。
しかし、「すごい技術なのは分かるが、自分の仕事のどこに使えるのかピンとこない」「何でも自動化できそうに思えるが、何から手をつければよいのか分からない」と戸惑う声も少なくありません。新しい技術を前にして、具体的な活用イメージが湧かないのは当然のことです。
この記事では、AIのなかでも業務で利用しやすい生成AIを中心に、できることや苦手なことを基礎から整理し、業務での活用イメージを分かりやすく解説します。
目次[非表示]
AIとは?基本的な仕組みと生成AIとの違い
ビジネスの現場でAIを活用するには、AIの基本的な考え方を理解することが重要です。近年、特に注目を集めているのが「生成AI」です。生成AIはAIの一種であり、予測や分類などを中心とするAIとは、役割や得意分野が異なります。まずは、それぞれの違いを確認しましょう。
項目 | 予測・分類を中心とするAI | 生成AI |
主な役割 | データを分析・予測・分類する | 新しいコンテンツを生成する |
得意なこと | 売上予測、需要予測、画像認識、異常検知、迷惑メール判定 | 文章作成、要約、翻訳、画像生成、プログラムコード生成 |
入力方法 | 業務システムなどに組み込み、定められた形式のデータを処理するケースが多い | チャット画面や業務ツールから、自然言語による指示やデータを入力して利用する |
主な活用例 | 需要予測、品質検査、不正検知 | メール作成、議事録作成、企画書作成、FAQ作成 |
導入形態 | 個別開発や業務システムへの組み込みが必要な場合がある | Webサービスなどから始められるものもある |
生成AIは、学習したデータを基に文章や画像、プログラムコードなどを生成できることが特徴です。チャット形式で「プロンプト」と呼ばれる指示・質問文を入力するだけで、文書作成や要約、アイデア出しなど、さまざまな業務を支援できます。専門的なプログラミング知識がなくても利用しやすいため、多くの企業で業務効率化や生産性向上を目的に導入が進んでいます。
業務に活用できる生成AIの得意領域
生成AIは、文章作成や情報整理、翻訳、アイデア出しなど、さまざまな業務を支援できます。
文章の作成・要約・校正
生成AIは、文章の作成や要約、校正を得意としています。メールや議事録、企画書、マニュアルなどの作成を支援できるほか、長文のレポートや会議の文字起こしデータを、指定した文字数や形式で要約することも可能です。
また、誤字脱字のチェックや、「より丁寧な表現にする」「箇条書きで整理する」といった文章の調整にも対応しています。定型的な文書作成や情報整理の負担を軽減できるため、資料作成や情報共有の効率化につながります。
膨大な情報の整理と分類
生成AIは、大量のテキストデータを整理・分類することも得意です。アンケートの自由記述や顧客からの問い合わせ内容、営業日報などを分析し、「内容ごとに分類する」「頻出する課題や要望を抽出する」「表形式で整理する」といった作業を効率的に行えます。
情報を構造化することで、傾向の把握や課題分析がしやすくなります。人手では時間がかかる情報整理を効率化できるため、マーケティングや顧客分析、業務改善など幅広い業務で活用されています。
データ分析の補助
生成AIは、表計算データの集計方法を提案したり、数値の傾向を文章で整理したりする際にも活用できます。分析の観点や適したグラフの種類を提案させることで、データを読み解くための下準備を効率化できます。
ただし、計算結果や分析内容に誤りが含まれる可能性があります。重要な分析に利用する場合は、元データと照合し、結果の妥当性を人が確認することが必要です。
文脈を踏まえた多言語翻訳
生成AIは、前後の文脈を踏まえながら翻訳できるため、より自然な表現に調整しやすいことが特徴です。また、「取引先向けなので丁寧な表現にする」「カジュアルな表現にする」といった指示にも対応できます。
海外企業とのメール作成や、外国語で書かれたマニュアル・資料の内容把握など、グローバルな業務でも活用されています。ただし、契約書や法務文書など、正確性が求められる文書では、人による確認を前提として利用することが重要です。
アイデア出し・企画の壁打ち
生成AIは、企画立案やアイデア出しの補助にも活用できます。新しいサービスの企画案やキャッチコピー、キャンペーンのアイデアなどを複数提案させることが可能です。
さらに、自分の企画に対する改善点や別の視点を提示させたり、想定される課題を洗い出したりすることで、企画の精度向上にも役立ちます。最終的な判断は人が行う必要がありますが、検討のたたき台を短時間で作成できるため、企画立案を効率的に進められます。
まずはどの業務から始めるとよい?
生成AIはさまざまな業務に活用できますが、最初から幅広い業務へ導入する必要はありません。まずは、AIの出力内容を人が確認しやすく、効果を実感しやすい業務から試し、慣れてきたら徐々に活用範囲を広げるとよいでしょう。
生成AIの活用段階と、取り組みやすい業務の例は以下のとおりです。
活用段階 | 試しやすい業務 | 取り組み方 |
最初に試す | メールの下書き、議事録作成、文章の要約 | 日常的に発生し、出力内容を確認しやすい業務から試す |
慣れてきたら | FAQ作成、企画書作成、データ分析の補助 | 効果が確認できた活用方法を、より幅広い業務へ応用する |
次の段階 | 他部門への展開、ルール整備 | 成功事例やプロンプトを共有し、組織で利用できる環境を整える |
初めて生成AIを利用する場合は、メールの下書きや議事録、要約など、日常的に繰り返し発生する業務から始めるのがおすすめです。作業にかかる時間を導入前後で比較しやすいため、生成AIによる効率化の効果も確認できます。
使い方に慣れてきたら、FAQや企画書の作成、データ分析の補助などへ対象を広げていきます。そのなかで効果的だったプロンプトや活用方法を蓄積しておくと、ほかの担当者にも共有しやすくなります。
さらに活用を広げる場合は、個人単位の利用からチーム・部門単位の利用へ移行し、利用ルールや確認方法を整備することが重要です。小さな業務から効果を確かめ、段階的に活用範囲を広げることで、生成AIを継続的な業務改善につなげやすくなります。
生成AIが苦手な領域
AIはさまざまな業務を効率化できる一方で、すべての業務を任せられるわけではありません。誤った判断や情報の誤用を防ぐためには、生成AIが苦手とする領域を理解し、人が確認・判断したほうがよい場面を見極めることが大切です。
最新情報の取得と事実確認
生成AIは、利用するサービスや設定によって参照できる情報の範囲が異なり、最新情報を常に取得・検証できるとは限りません。また、事実と異なる内容を、もっともらしく回答する「ハルシネーション」が発生することもあります。
そのため、法令や制度の改正、企業情報、市場動向など正確性が求められる情報は、必ず公式サイトや公的機関などの一次情報と照らし合わせて確認することが重要です。生成AIが出力した内容をそのまま利用せず、参考情報として扱い、重要な情報は一次情報で確認しましょう。
責任を伴う意思決定
生成AIは、情報を整理したり複数の選択肢を提示したりできますが、最終的な意思決定を行うことはできません。経営判断や契約内容の確認、人事評価、法務・財務に関する判断など、責任を伴う業務は担当者が最終的に判断する必要があります。
生成AIは、意思決定を支援するツールです。提示された情報を参考にしながら、専門知識や経験、組織の方針などを踏まえて最終判断を行うことが重要です。
曖昧な指示への対応
生成AIは、入力された指示を基に回答を生成します。そのため、「いい感じにまとめて」「分かりやすく作って」といった曖昧な指示では、期待どおりの結果が得られないことがあります。
生成AIを効果的に活用するためには、「誰に向けた資料か」「何を目的とするか」「どのような形式・文体にするか」といった条件を具体的に伝えることが大切です。目的や前提条件を明確にするほど、業務で活用しやすい回答を得られます。
業務における生成AIの活用シーン
生成AIは、日々の業務の一部を効率化するツールとして活用できます。すべての業務を生成AIに任せるのではなく、文書作成や情報整理など、人が行う業務を補助する形で取り入れることが効果的です。
ここでは、ビジネスで活用しやすい代表的なシーンを紹介します。
日々のメール作成・問い合わせ対応の補助
生成AIは、ビジネスメールや問い合わせ対応の下書き作成に活用できます。取引先への案内メールやお詫びメール、社内向けのお知らせなど、定型的な文書を短時間で作成できるほか、FAQや社内マニュアルを活用した問い合わせへの回答案の作成にも対応しています。
担当者が内容を確認・修正したうえで利用することで、回答品質を維持しながら対応時間の短縮につながります。
議事録作成・ToDo整理
生成AIは、会議の文字起こしから議事録を作成し、決定事項やToDoを整理する際にも活用できます。
「決定事項」「検討課題」「担当者ごとのToDo」といった形式で整理するよう指示すれば、会議内容を分かりやすくまとめられます。議事録の作成にかかる負担を軽減し、会議後の情報共有やタスク管理を効率化できます。
提案書・企画書の構成案作成
生成AIは、提案書や企画書の構成案を作成する際にも活用できます。「新規顧客向けの提案書を作成したい」といった目的を伝えることで、目次や章立てのたたき台を提示できます。
その構成案を参考に内容を検討することで、資料作成を効率的に進められます。最終的な内容や顧客ごとの提案内容は人が調整する必要がありますが、ゼロから構成を考える負担を軽減できます。
資料の要約・比較
生成AIは、入力または共有した長文の資料や調査レポート、マニュアルなどを要約し、内容を短時間で把握する際にも活用できます。また、複数の資料の共通点や相違点を整理させることで、資料の読み込みや比較にかかる負担を軽減できます。
ただし、要約内容に誤りが含まれる可能性もあるため、重要な情報は原文を確認したうえで活用することが重要です。
業務で生成AIを活用する際の注意点
生成AIは業務効率化に役立つ一方で、情報漏えいや誤情報の利用などのリスクも伴います。安全かつ効果的に活用するためには、適切な運用ルールを整備し、人による確認を前提とした運用体制を構築することが欠かせません。
情報漏えいリスクとセキュリティ対策
外部の生成AIサービスに顧客情報や機密情報、未公開のプロジェクト情報などを入力すると、その情報がサービス提供事業者の環境へ送信・保存されます。データの保持期間や学習利用の有無は、サービスの契約内容や設定によって異なるため、取り扱いを確認せずに機密情報を入力すると、情報管理上のリスクにつながります。
業務で利用する際は、入力してよい情報と禁止する情報を定めたうえで、サービスの契約条件、学習利用の設定、データの保存期間、アクセス権限などを確認しましょう。自社のセキュリティポリシーに適合したサービスを選定し、適切な設定で利用することが大切です。
人による最終確認を徹底する
生成AIは、事実と異なる情報をもっともらしく回答することがあります。そのため、生成AIが作成した文章や資料を、そのまま社外へ公開したり、顧客へ送付したりするのではなく、必ず内容を確認したうえで活用することが大切です。
数値や固有名詞、法令、制度など正確性が求められる情報は、人による確認が欠かせません。生成された内容は、下書きや参考情報として扱い、最終的な内容は担当者が確認・修正する運用を徹底することが求められます。
安全に活用するための社内ルールの策定
生成AIを安全に活用するためには、利用ルールをあらかじめ整備することも欠かせません。利用できるAIツールや対象業務、入力してよい情報・禁止する情報などを明確にしておくことで、情報漏えいや不適切な利用のリスクを低減できます。
また、従業員が会社の管理外でAIツールを利用する「シャドーIT」を防ぐためにも、社内ガイドラインを策定し、継続的に周知・運用することが求められます。
自社で活用できる業務を整理する
生成AIの活用を始める際は、まず「どの業務から試すか」を整理することが重要です。日々の業務を振り返り、時間がかかる定型作業や、文章作成・情報整理・要約など生成AIが得意とする業務を洗い出すことで、自社に適した活用シーンが見えてきます。
導入時は、業務全体を一度に自動化するのではなく、メール作成や議事録作成など、効果を確認しやすい業務から試すことがポイントです。まずは対象を限定して活用方法や運用ルールを検証し、得られた効果や課題を踏まえて対象業務を広げていきましょう。
さらに、一度に全社へ広げるのではなく、個人や一部のチームで得られた成功事例を共有するとともに、利用ルールや人による確認フローを整備することが重要です。運用方法を継続的に見直しながらチームや部門へ展開することで、安全性を確保しつつ生成AIの活用を定着させやすくなります。
まとめ
生成AIは、文章作成や要約、情報整理、翻訳、アイデア出しなど、さまざまな業務の効率化を支援するツールです。一方で、事実確認や責任を伴う意思決定など、人による判断が欠かせない業務もあります。
生成AIを効果的に活用するためには、得意・不得意を理解し、自社の業務に適した活用方法を見極めることが大切です。また、情報漏えい対策や人による最終確認、社内ルールの整備などを行うことで、リスクを抑えながら安全に活用できます。
まずは、メール作成や議事録作成など取り入れやすい業務から試し、結果を確認しながら活用範囲を段階的に広げていきましょう。その際は、人による確認や社内ルールを前提とした運用を継続することが重要です。




