
AIエージェントの活用例とは?業務でできること・導入時の注意点を分かりやすく解説
文章作成や要約など、個別業務で生成AIを活用する企業が増えています。一方で、「情報収集からシステムへの登録まで、複数の工程をまとめて支援できないか」「複数のツールを行き来する業務を効率化できないか」と考えている情報システム部門(以下、情シス)やDX推進担当者もいるのではないでしょうか。
こうした生成AI活用の次のステップとして注目されているのが、「AIエージェント」です。AIエージェントは、文章を生成するだけでなく、目的に応じて必要な情報を収集したり、複数のタスクを段階的に実行したりすることで、業務プロセスの幅広い工程を支援できる可能性があります。
この記事では、AIエージェントの基本的な仕組みや、生成AI・RPA・ワークフローシステムとの違いを整理したうえで、業務別の活用例を紹介します。さらに、導入前に確認しておきたいリスクやコスト、PoC(Proof of Concept:概念実証)から効果検証、段階的な拡大までの進め方についても解説します。
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AIエージェントとは?生成AI・RPA・ワークフローとの違い
AIエージェントとは、人が設定した目的に沿って、利用可能なデータやツールを使いながら手順を計画し、複数のタスクを段階的に実行する仕組みです。
一般的なチャット型生成AIが、ユーザーの指示に応じた文章や回答の生成を主な用途とするのに対し、AIエージェントは、生成AI(LLM)を中核に、ツールやデータとの連携、手順の計画・判断の仕組みを組み合わせ、目的に応じて複数の処理を連続して実行できる点が特徴です。
また、業務自動化にはRPAやワークフローシステムも利用されています。一般的なRPAはあらかじめ設定した手順に沿った定型作業の自動化、ワークフローシステムは申請・承認など決められた業務プロセスの管理を得意としています。一方、AIエージェントは、状況に応じて必要な情報や処理を自ら選びながらタスクを進められる点に違いがあります。
▼生成AI・RPA・ワークフローシステム・AIエージェントの違い

RPAやワークフローシステムは、手順や処理の流れがあらかじめ決まっている業務に適しています。一方、AIエージェントは、取得した情報や状況に応じて次に必要な処理を選択できるため、状況に応じた判断が必要な業務の支援にも活用できます。
ただし、AIエージェントは判断の誤りや意図しない操作が起こり得るため、正確性や再現性が求められる業務ではRPAやワークフローシステムが適しており、重要な処理には人による確認を組み合わせることが望まれます。
例えば、「来週のA社との打ち合わせ候補を整理して」と指示した場合、連携されたカレンダーから空き時間を確認し、候補日程と案内文の下書きを作成するといった処理が考えられます。さらに、必要に応じて外部のアプリケーションやデータベースと連携することで、情報の取得からシステムへの登録まで、一連の業務を支援できる場合があります。
AIエージェントが注目される理由
AIエージェントが注目される背景には、文章作成や要約といった個別作業だけでなく、複数の工程やツールにまたがる業務を支援したいというニーズがあります。
これまでの生成AI活用は、文章作成や要約など、従業員一人ひとりの業務を支援する用途が中心となる例が多く見られました。しかし、企業がさらなる生産性向上を目指すには、個々の作業だけでなく、複数の工程や部署にまたがる業務のつながりも含めて、効率化の余地を検討することが重要になっています。
AIエージェントは、情報収集やタスク実行、外部システムとの連携などを組み合わせながら、一連の業務を支援できる可能性があります。例えば、社内データと外部情報を収集・整理してレポートの下書きを作成したり、会議後のタスク登録や関係者への通知案の作成を行ったりと、従来は人が複数のツールを使って対応していた業務を支援することで、業務プロセス全体の効率化が期待されています。
AIエージェントの業務別活用例
AIエージェントは、さまざまな業務での活用が期待されています。ただし、すべての業務を完全に自動化できるわけではありません。精度や安全性、影響範囲を踏まえ、人による確認や運用ルールを前提として活用範囲を検討することが重要です。
情シス業務の効率化
情シスでは、社内からの問い合わせ対応や障害対応、アカウント管理など、日常的に発生する業務にAIエージェントを活用できます。
例えば、監視ツールやログ、過去の対応履歴などから障害に関連する情報を収集し、原因の候補の整理や対応方法の検討を支援できます。
また、ITサービス管理ツールと連携し、問い合わせや障害の内容に応じてチケットを起票・分類したり、担当者へ割り当てたりする活用も考えられます。
一方で、情シス業務では、システムの設定情報や従業員情報など、機密性の高い情報を扱う場合があります。
AIエージェントに付与するアクセス権限や実行可能な操作の範囲を適切に設定し、アカウントの変更やシステム設定など影響の大きい操作については、人による確認を挟む運用が必要です。
カスタマーサポート・問い合わせ対応の高度化
あらかじめ設定された分岐に沿って回答するシナリオ型チャットボットでは、想定外の問い合わせへの対応が難しい場合があります。
これに対しAIエージェントは、適切な権限のもとでFAQや製品マニュアルなどを参照し、問い合わせ内容に応じた回答案を作成できます。
また、返品対応などの処理が必要な場合には、在庫管理システムや受注管理システムなどと連携し、一連の対応を支援する活用も期待されています。
こうした顧客対応に活用する場合は、誤案内や顧客情報の取り扱い、返品・返金処理の誤りに注意が必要です。
特に、料金や契約内容を誤って案内したり、返品・返金の条件や金額を誤って処理したりすると、顧客とのトラブルにつながる可能性があります。
営業リサーチと商談準備の支援
営業担当者が商談前に行う情報収集を支援できます。
例えば、Web検索機能や社内データへの接続が許可されている場合、公開されているニュースやプレスリリース、業界情報、社内に保存された商談履歴などを整理し、商談準備用のレポート案を作成できます。
営業リサーチでは、情報の鮮度や出典の確かさ、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)への誤登録に注意が必要です。
古い情報や誤った情報を基に提案すると、商談内容に影響する可能性があります。
会議の議事録作成とタスク登録
会議の文字起こしデータから決定事項やタスクの候補を抽出し、確認のうえでプロジェクト管理ツールへ登録する活用が考えられます。
また、担当者への通知やリマインドなど、会議後のフォローアップ業務を支援する活用も可能です。
一方、議事録の作成やタスクの登録では、発言者や担当者、期限などを誤って認識するケースも想定されます。
特に、担当者や期限を誤ったままタスクとして登録すると、対応の遅れや抜け漏れにつながる可能性があります。
経費精算・請求書処理
経費精算や請求書処理では、OCR(Optical Character Recognition:光学的文字認識)や経費精算システムと連携し、領収書や請求書から金額、日付、取引先などの情報を読み取り、社内ルールと照らし合わせて確認が必要な項目を抽出する活用が考えられます。
また、取得した情報をシステムへ登録する際の入力作業の効率化にも活用できます。
一方で、金額や日付、取引先、勘定科目などを誤って認識・登録するリスクがあります。
誤った情報がそのまま登録されると、経費精算や支払い、会計処理など後続の業務に影響を及ぼすおそれがあります。
人事・採用業務
人事・採用業務では、履歴書や職務経歴書の内容を整理したり、求人要件と照らし合わせて面接時に確認したい事項の候補を抽出したりする用途が考えられます。
また、面接日程の調整や候補者への案内文の作成など、採用活動に伴う定型業務の支援にも活用できます。
採用活動では、氏名や経歴などの個人情報の取り扱いに加え、AIの出力に含まれる偏りにも注意が必要です。
候補者の評価や選考に利用した場合、AIの出力に含まれるバイアスによって、特定の属性などに対する不公平な評価につながるおそれがあります。
候補者の評価や合否の判断にAIの出力をそのまま用いず、最終的な判断は人が行う運用が重要です。
AIエージェント導入前の注意点
AIエージェントを業務に導入する際は、業務効率化の効果だけでなく、誤った処理のリスクや権限管理、運用体制、コストなどを事前に検討する必要があります。
ここでは、AIエージェントを安全かつ継続的に活用するために、導入前に確認しておきたいポイントを紹介します。
AIの出力・処理を検証できる仕組みを設ける
AIエージェントによる誤った回答や処理を防ぐため、出力内容や処理の妥当性を確認できる仕組みを整えることが重要です。
例えば、回答の根拠となった情報源を確認できるようにしたり、出力内容を一定のルールに基づいてチェックしたりする方法があります。
また、想定外の出力やエラーが発生した場合には処理を停止し、担当者による確認へ切り替えるなど、問題のある処理がそのまま実行されない運用を整える必要があります。
業務への影響が大きい処理の承認については、次の「人による確認プロセスを設ける」で解説します。
人による確認プロセスを設ける
AIエージェントは複数のタスクを実行できますが、重要な意思決定や影響の大きい処理は、AIエージェントに任せきりにせず、業務の影響度やリスクに応じて、人による確認・承認を組み込む必要があります。
例えば、契約内容の確認や顧客への回答、社外への情報発信など、影響の大きい業務では、人が内容を確認・承認するプロセスを組み込むことで、誤った処理や判断のリスクを抑えやすくなります。
ただし、承認が形式的にならないよう、確認すべき観点や担当者を明確にしておくことが重要です。
外部情報に含まれる不正な指示への対策
AIエージェントがメール、Webサイト、文書などの外部情報を読み取る場合、その情報に埋め込まれた不正な指示(プロンプトインジェクション)に影響され、意図しない処理を行う可能性があります。
外部情報をそのまま命令として扱わない設計にするとともに、利用できるツールや操作を制限し、送信・更新・削除など影響の大きい処理には人による承認を設けることが重要です。ただし、完全に防ぐことは難しいため、被害を限定する多層的な対策が必要です。
データへのアクセス権限と操作権限を管理する
AIエージェントは、社内システムやクラウドサービスと連携して動作します。
そのため、必要以上のアクセス権限を付与すると、機密情報や個人情報の漏えいにつながるおそれがあります。
利用するデータと実行する操作の範囲を明確にしたうえで、業務に必要な最小限の権限のみを付与することが重要です。
閲覧、登録、更新、送信、削除などの権限を分け、不要な操作は許可しない設計にします。
また、誰が、いつ、どのエージェントを利用し、どのツールやデータへアクセスしたかを確認できるログを取得し、保管します。
異常な処理が発生した場合に停止・調査できる体制も整えておく必要があります。
AIエージェントを活用する業務を適切に選定する
AIエージェントは、すべての業務に適しているわけではありません。
手順や判断基準が整理されているか、実行結果を確認しやすいか、誤った処理が発生した場合の影響を限定できるかといった観点から、対象業務を選定する必要があります。
高度な判断や対人コミュニケーション、法的・社会的な責任を伴う業務では、人による対応や承認を前提として活用範囲を検討することが重要です。
導入・運用にかかるコストを把握する
AIエージェントの導入では、AIサービス自体の利用料金だけでなく、外部システムとの連携や環境構築、運用・保守などにもコストがかかる場合があります。
また、利用するサービスによっては、APIの利用量や処理するデータ量などに応じて料金が増加することもあります。
導入前には、初期費用と継続的な運用費用を整理したうえで、AIエージェントによって削減できる作業時間や人的コストと比較することが重要です。
さらに、AIの出力内容を確認・修正するための人的負担も考慮し、導入によって得られる効果に対してコストが見合っているかを継続的に検証することが重要です
AIエージェントの導入を進める3ステップ
AIエージェントを効果的に活用するためには、一度に幅広い業務へ導入するのではなく、対象業務を選定したうえでPoCを実施し、効果を検証しながら適用範囲を広げることが重要です。
ここでは、AIエージェントの導入を進める基本的な3つのステップを紹介します。
STEP1|対象業務を選ぶ
まずは、AIエージェントを導入する対象業務を選定します。手順や判断基準が整理されており、AIが誤った処理を行った場合でも影響範囲が限定的な業務から検討することが重要です。
例えば、社内公開情報を使った情報収集やレポートの下書き作成、テスト環境でのタスク登録などが挙げられます。
現在かかっている作業時間や発生している課題を整理したうえで、定型的な工程が多く、AIエージェントによる効率化の効果を検証しやすい業務から優先的に取り組みましょう。
STEP2|PoCと確認フローを設計する
対象業務を決めたら、限定的な範囲でPoCを実施します。PoCでは、AIエージェントに任せる処理と人が担当する処理を切り分け、どのタイミングで人が確認・承認するのかを明確にします。
例えば、AIエージェントが情報収集や回答案の作成までを行い、顧客への送信は担当者が承認するといったフローが考えられます。
併せて、利用するデータや操作権限、問題が発生した場合の対応方法なども整理し、実際の業務で安全に運用できるかを検証します。
STEP3|KPIを評価して段階的に拡大する
PoCを実施したら、あらかじめ設定したKPIを基に導入効果を評価します。
例えば、「情報収集にかかる時間」「タスクの登録漏れや入力ミスの件数」「AIの出力を修正する回数や確認にかかる時間」などを導入前後で比較します。
あわせて、導入・運用にかかったコストと削減できた作業時間を比較し、費用対効果も評価します。
期待した効果が得られ、安全に運用できることを確認したうえで、対象業務や利用部門、連携するシステムを広げていきます。
期待した効果が得られなかった場合は、業務フローやAIエージェントに任せる範囲を見直し、改善と検証を繰り返すことが重要です。
まとめ
AIエージェントは、生成AIにデータや業務ツールを組み合わせ、情報収集やタスク登録、通知など、複数の工程にまたがる業務を支援できる仕組みです。
情シス業務をはじめ、カスタマーサポートや営業支援、議事録作成、経費精算、人事・採用など、幅広い業務での活用が考えられます。
導入にあたっては、対象業務を明確にしたうえで、AIの出力を検証する仕組みやアクセス権限、人による承認フローなどを整えることが重要です。
まずは限定的な範囲でPoCを実施し、効果やリスクを検証しながら、対象業務や利用部門を段階的に広げていくとよいでしょう。
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