
ファイルサーバー更改時のクラウド移行判断軸|オンプレミス更新とどう比較する?
企業のデータ管理を支えるファイルサーバーですが、保守期限が近づいていることや慢性的な容量不足をきっかけに、次期システムへの更改を検討するタイミングを迎える企業も少なくありません。特に、大容量のCADデータや現場写真を頻繁に扱う製造業や建設業において、情報システム部門(以下、情シス)の運用負荷が課題となるケースもあります。
システム更改は、これまでどおりオンプレミス環境を更新するだけでなく、クラウドストレージへの移行を検討するタイミングでもあります。
この記事では、ファイルサーバーの更改(更新・リプレース)時にクラウド移行が比較対象となるケースや、オンプレミス更新では解決しにくい課題、オンプレミス更新とクラウド移行を比較する際のポイントについて解説します。
目次[非表示]
なぜファイルサーバー更改時にクラウド移行を検討するのか
ファイルサーバーの更改時期は、単にハードウェアを入れ替えるだけでなく、社内のファイル管理基盤全体を見直す機会です。ここでは、更改のタイミングでクラウド移行も選択肢となる背景について解説します。
ハードウェアの老朽化と保守期限
オンプレミスのファイルサーバーは、機器や保守契約ごとに期限が設定されているため、一定期間ごとに更新を検討する必要があります。更改時にはサーバー本体だけでなく、OSやバックアップ環境の更新、データ移行なども発生します。
こうしたタイミングは、従来の構成をそのまま更新するか、別の構成へ見直すかを検討する機会にもなります。
データ容量の増加
CADデータや高精細な画像・動画など、大容量データを扱う業務では、データの蓄積に伴って必要なストレージ容量も増加します。オンプレミスでは将来的なデータ量を見据えた容量設計が必要になるため、更改時には今後のデータ増加を踏まえ、容量をどのように確保・拡張していくかも含めて検討することが重要です。
働き方やファイル利用環境の変化
テレワークやサテライトオフィスの普及、拠点間での共同作業、取引先・協力会社とのデータ共有など、ファイルを利用する場所や相手は多様化しています。ファイルサーバーを導入した当時から利用環境が変化している場合は、現在の業務に適したファイル管理基盤になっているかを更改時に見直すことが重要です。
IT運用に求められる要件の変化
ファイル管理基盤には、日常的なファイル共有だけでなく、アクセス管理やデータ保護、障害・災害発生時の復旧など、さまざまな対応が求められます。
現在の運用体制やセキュリティ要件に合っているかを確認し、オンプレミス更新とクラウド移行を含めて今後の構成を検討することが重要です。
オンプレミス更新とクラウド移行の比較ポイント
オンプレミス更新とクラウド移行は、どちらかが一律に優れているわけではありません。自社の業務、セキュリティ要件、運用体制、既存システムとの連携などを踏まえて比較する必要があります。
比較項目 | オンプレミス更新 | クラウド移行 |
費用構造 | 機器・構築などの初期費用に加え、保守・運用費用が発生する | 移行時の初期費用に加え、サービスの利用料などの継続費用が発生する |
運用管理 | 機器、OS、バックアップ、障害対応を自社で管理する | インフラは事業者が管理する |
容量拡張 | 機器増設や構成変更が必要になる | サービスや契約内容に応じて拡張しやすい |
社外・多拠点利用 | VPNやネットワーク設計が必要になる場合がある | インターネット経由で利用できるが、認証や端末管理が必要 |
権限・ログ | 製品や設計によって柔軟に構成できる | サービスやプランによって利用できる管理機能が異なる。また、アカウント・権限・運用ルールは自社で管理する |
復旧 | バックアップ環境と復旧手順を自社で設計・運用する | 履歴・復元機能を利用できる場合があるが、保持期間や対象を確認する |
既存システム連携 | 社内システムとの連携を維持しやすい場合がある | 対応形式、API、同期方法などの事前検証が必要 |
ネットワーク | 社内利用では社内LANを中心に運用できる | 通信回線や大容量ファイル利用時の性能確認が必要 |
クラウドへ移行する場合も、サービスを導入するだけで運用上の課題がすべて解消されるわけではありません。利用するネットワーク環境や既存システムとの連携可否、継続的に発生する利用料を確認するとともに、アカウントやアクセス権限、運用ルールなど、自社で管理する範囲を整理しておくことが重要です。
特に、大容量ファイルを扱う場合は通信環境が業務に与える影響も確認する必要があります。また、利用できる権限管理やログ、復元などの機能はサービスや契約プランによって異なります。
オンプレミス更新とクラウド移行それぞれの特徴や確認事項を踏まえ、自社の要件に合う方法を検討しましょう。
機器更新のみでは残る可能性がある運用課題
ファイルサーバーの機器を更新することで、容量や性能、保守期限に関する課題を改善できる場合があります。一方、ファイルの利用方法や管理体制に起因する課題は、機器を新しくするだけでは解消されない可能性があります。
社外共有の手間とシャドーITのリスク
製造業や建設業では、協力会社や現場との間で頻繁なデータ共有が発生します。オンプレミス環境へ社外からアクセスするには、VPNなどの環境整備が必要になるケースも少なくありません。また、回線やネットワーク構成、同時接続数によっては、大容量ファイルへのアクセスに時間を要することも考えられます。
このような不便な状態が続くと、従業員が会社の許可なく個人向けの無料クラウドサービスを利用する「シャドーIT」を誘発する可能性があります。取引先ごとに異なる共有方法への対応なども含め、社外共有の運用そのものを見直す必要があります。
属人化した権限管理とログ管理の限界
長年運用されてきたファイルサーバーは、退職者や異動者のアカウントがそのまま残っていたり、例外的なアクセス権限が付与され続けたりと、管理が複雑になりがちです。そのため、定期的な権限棚卸しが必要になりますが、利用者や共有フォルダが増えるほど確認作業は煩雑になります。
オンプレミス環境でも操作ログを取得できますが、取得する項目や保存期間、確認方法は製品や設定によって異なります。必要なログが取得・保管されていない場合、監査やインシデント発生時の調査に時間を要する可能性があります。
多拠点利用に伴うネットワークの課題
全国に複数の拠点を持つ企業や、現場への直行直帰が多い環境では、拠点ごとのネットワーク環境やVPN接続の状況によって、ファイルへのアクセスや共有に時間がかかるケースがあります。
サーバー機器そのものを更新しても、接続方法やネットワーク構成が変わらなければ、こうした利用上の課題が残る可能性があります。
バックアップ・復旧と運用負荷
オンプレミス環境では、サーバー機器の保守やOSアップデート、容量管理、バックアップ、障害対応などを継続的に行う必要があります。機器を更新しても、こうした管理業務そのものは引き続き発生します。
また、ランサムウェアや障害などに備えるには、バックアップを取得するだけでなく、保管方法やアクセス権限、復旧手順なども含めた運用が必要です。更改時には、現在の体制でこうした運用を継続できるかを確認することが重要です。
クラウド移行を検討したいケース
オンプレミスとクラウドのどちらが適しているかは、企業の業務スタイルや扱うデータ、既存システム、運用体制などによって異なります。
例えば、以下のような状況に当てはまる場合は、オンプレミス更新だけでなく、クラウドストレージも比較対象に含めることが考えられます。
● 協力会社や取引先とのファイル共有が多い
協力会社や設計事務所、工事現場など、社外とのファイル共有が日常的に発生する企業では、共有方法やアクセス管理の観点から、クラウドストレージを比較対象に含めることが考えられます。
● 多拠点やテレワークで利用する機会が多い
営業所や工事現場、テレワークなど、社内ネットワーク外からファイルを利用する機会が多い場合も、クラウドストレージを比較対象に含めることが考えられます。
● 権限・ログ管理が複雑化している
利用者や共有フォルダが多く、アクセス権限の棚卸しやログ管理に課題がある場合は、現在の管理方法とクラウドサービスで利用できる管理機能を比較するとよいでしょう。
● バックアップや復旧体制に課題がある
バックアップや障害・災害時の復旧体制に課題がある場合も、オンプレミスで環境を再構築する方法とクラウドサービスを利用する方法を比較できます。
● ファイルサーバーの運用負荷が大きい
機器の保守やOSアップデート、容量管理、障害対応などに多くの工数がかかっている場合は、クラウドサービスを利用した場合に自社の管理範囲をどこまで減らせるか確認することも選択肢の一つです。
なお、自社に適したクラウドストレージを比較する際は、容量や費用だけでなく、共有方法、権限管理、復元、管理機能、操作性なども確認する必要があります。「クラウドストレージ選定で押さえておきたい10のポイント」では、選定時の確認項目を一覧で整理しています。
クラウド移行を比較対象に含める場合の確認ポイント
更改時に整理した移行対象データや権限、外部共有、バックアップ・復旧などの要件を基に、クラウド環境で実現できるかを確認します。特に、移行方法やネットワークへの影響、既存システムとの連携、移行後の運用方法などは事前に確認しておくことが重要です。
移行対象データを問題なく移せるか確認する
移行対象となるデータの容量やファイル形式、利用頻度などを踏まえ、移行にかかる時間やネットワークへの影響を確認します。大容量ファイルを扱う場合は、移行後の操作性も含めて事前に検証しておくと安心です。
権限やフォルダ構成をクラウド環境で実現できるか確認する
現在のフォルダ構成やアクセス権限を、そのままクラウド上で再現できるとは限りません。利用するサービスの権限設定や共有方法を確認し、自社の運用要件に合うかを確認します。
移行スケジュールに無理がないか確認する
業務への影響を抑えるため、移行対象や部門ごとに優先順位をつけ、移行スケジュールを検討します。必要に応じて段階的に移行し、事前検証を行いながら進める方法もあります。
移行後の運用方法を確認する
クラウド移行後は、共有リンク、アクセス権限、アカウント、ログ確認など、オンプレミスとは異なる運用が必要になる場合があります。利用部門への周知方法も含め、移行後の管理方法を整理しておきましょう。
課題解決の選択肢となる「Dropbox」
ファイルサーバー更改では、オンプレミス環境を更新するだけでなく、クラウドストレージを選択する方法もあります。法人向けクラウドストレージである「Dropbox」は、社外とのファイル共有やアクセス権限管理、共同作業、データ保護など、オンプレミス環境で課題になりやすい運用を支援する機能を備えています。
Dropboxでは、共有フォルダへの招待や共有リンクを利用して、社外の協力会社や取引先とファイルを共有できます。共有フォルダへ招待する場合は、相手に閲覧・編集の権限を設定可能です。共有リンクは基本的に閲覧用となり、パスワードや有効期限も設定できます。こうした共有方法の違いを踏まえ、社内での利用ルールを整備することが重要です。
対象となるチーム向けプランでは、管理者が共有やファイル操作などのアクティビティを確認できます。ただし、取得できるログの内容はプランや操作によって異なるため、自社で必要な管理項目を確認しておくことが重要です。
また、契約プランごとの保持期間内であれば、バージョン履歴やDropbox Rewind(巻き戻し機能)を使って以前の状態へ戻すことができます。これらは復旧手段の一つになりますが、自社のBCPやバックアップ要件を単独で満たすとは限らないため、復旧可能期間や復旧手順を確認しておくことが重要です。
Dropboxの「オンラインのみ」機能では、ファイルをエクスプローラーやFinder上に表示しながら、開くまで端末のストレージ容量を使用しない運用ができます。大容量ファイルを扱う場合の操作性は、ネットワーク環境や利用するアプリケーションによって異なるため、実際の業務データを使った事前検証が必要です。
クラウドへ移行することで、自社での物理サーバー保守や容量増設の負担を減らせる一方、アカウント、権限、共有ルール、ネットワーク、復旧手順の管理は引き続き必要です。
クラウドストレージ選定の判断軸を資料で確認する
ファイルサーバー更改では、オンプレミス環境を更新するか、クラウドストレージへ移行するかを、自社の業務や運用体制に合わせて判断することが重要です。しかし、クラウドストレージはサービスごとに特徴や機能が異なるため、比較の観点を整理しないまま選定すると、導入後に運用面でミスマッチが生じる可能性があります。
「クラウドストレージ選定で押さえておきたい10のポイント」では、クラウドストレージを比較・検討する際に確認したいポイントを分かりやすく整理しています。自社に適したサービスを選定するための判断材料として、ぜひご活用ください。
▼クラウドストレージ選定の判断材料が分かる資料はこちら
まとめ
この記事では、ファイルサーバー更改時にクラウド移行を検討する背景や、オンプレミス更新だけでは解決しにくい課題、クラウド移行が比較対象となるケース、オンプレミス更新とクラウド移行の比較ポイントについて解説しました。
ファイルサーバーの更改は、単に機器を更新するだけでなく、ファイル管理やデータ共有の方法を見直す機会でもあります。社外とのファイル共有、権限管理、バックアップ・復旧、運用負荷などの課題を整理したうえで、自社の業務やセキュリティ要件に適した環境を選択することが重要です。
クラウドストレージの導入を検討している方は、「クラウドストレージ選定で押さえておきたい10のポイント」を活用し、比較・検討の判断材料を整理したうえで、自社に適したサービスを選定しましょう。
▼クラウドストレージ選定の判断材料が分かる資料はこちら





