
ファイルサーバー更改前に確認したい10のチェックポイント
ファイルサーバーの更改を成功させるカギは、「移行作業」そのものではなく、事前の準備にあります。現在、多くの企業で利用されているWindows Server 2016(※)の延長サポートは、2027年1月12日に終了予定です。更改時期を迎え、「そろそろサーバーを入れ替えなければ」と考えている企業も多いのではないでしょうか。
一方で、ファイルサーバーの更改はハードウェアを入れ替えるだけではありません。権限管理やバックアップ体制、外部共有ルールなどを見直し、データガバナンスを強化する重要な機会でもあります。
本記事では、情報システム部門が更改前に確認しておきたい10のチェックポイントを紹介します。
※Windows Serverは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。
出典:Microsoft Learn Webサイト『Windows Server 2016』
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なぜ今、ファイルサーバー更改が増えているのか
ファイルサーバーの更改を検討する企業が増えている背景には、大きく3つの要因があります。
OSやハードウェアの保守期限の到来
Windows Server 2016は2027年1月12日に延長サポートが終了予定です。また、Windows Server 2019もメインストリームサポートはすでに終了しており、延長サポートは2029年1月9日に終了予定となっています。Windows Server 2012/2012 R2はすでに2023年10月にサポートが終了しており、現在も移行を進めている企業は少なくありません。サーバー更改は直前に対応するのではなく、計画的に進めることが重要です。
サポート終了後は、新たな脆弱性が発見されてもセキュリティ更新プログラムが提供されなくなります。サイバー攻撃では、こうしたサポートが終了したOSが狙われるケースも多く、継続利用によるセキュリティリスクは高まります。
出典:Microsoft Learn Webサイト『Windows Server 2016』『Windows Server 2019』『Windows Server 2012および 2012 R2 のサポート終了』
データ大容量化による容量不足の深刻化
業務のデジタル化に伴い、扱うデータ量は年々増加しています。例えば、製造業ではCADデータやBIMデータなど、1ファイルが数百MB〜数GBに及ぶケースもあります。建設業でも、現場写真や図面データの増加により、ストレージ容量の逼迫が課題となっています。
さらに、拠点ごとにファイルサーバーを分散管理している場合、「一方は容量に余裕がある一方で、もう一方は上限に達している」といったように、リソースの偏りや運用の非効率が生じることもあります。
テレワークや拠点分散に伴う働き方の変化
ハイブリッドワークや現場からのリモートアクセスが一般化した現在、社内LANからしかアクセスできない従来型のファイルサーバーでは、業務に支障をきたす場面も増えています。
インターネット環境があれば場所を問わずデータへアクセスできる環境を整備することは、情報共有の迅速化だけでなく、事業継続の観点からも重要な要件となっています。
更改時に見落とされやすい課題
ファイルサーバーの更改では、ハードウェアやOSの更新に目が向きがちですが、運用面の課題もあわせて見直すことが重要です。特に、次の4つは見落とされやすい課題です。
- 外部共有ルールの見直し
メール添付やPPAP(※)など従来の共有方法を継続すると、新しい環境でも同じセキュリティリスクを抱え続けることになります。
- 権限管理の棚卸し
退職者アカウントや不要なアクセス権限を整理しないまま移行すると、新しい環境にも不要な権限を引き継いでしまうおそれがあります。
- バックアップ体制の確認
バックアップを取得していても、復元できなければ十分な対策とはいえません。更改前に取得方法や復元手順を確認しておくことが重要です。
- ランサムウェア対策の見直し
ランサムウェアの被害は中堅・中小企業にも広がっています。更改は、バックアップやアクセス管理を含めたセキュリティ対策を見直す機会でもあります。
※PPAPとは、パスワード付きZIPファイルをメールで送付し、別メールでパスワードを通知する方式のこと。
外部共有や権限管理、バックアップ運用など、オンプレミス環境で起こりやすい課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
ファイルサーバー更改で見落とされやすい5つの課題|クラウド化・外部共有・バックアップの見直しポイント
更改前チェックリスト10項目
情シス部門がファイルサーバー更改を計画する際に、事前に確認しておきたい10のチェックポイントをカテゴリ別に紹介します。
①現行サーバーの保守期限・EOLを確認する
最初に確認したいのは、現行サーバーのOSやハードウェアのサポート終了日です。サポート終了後は、新たな脆弱性に対する更新プログラムが提供されなくなるほか、障害発生時にメーカーサポートを受けられない、交換部品の調達が難しくなるなど、セキュリティや運用面のリスクが高まります。更改には計画から移行完了まで一定の期間を要するため、早めに準備へ着手することが重要です。
②データ総量と年間増加ペースを把握する
現在のデータ容量だけでなく、過去1〜2年間のデータ増加量も確認します。製造業のCADデータや建設業の施工写真などは、年間数TB単位で増加するケースもあり、将来必要となるストレージ容量を見積もるうえで重要な指標となります。
③フォルダ構成と不要データを棚卸しする
データ量が多いほど、移行作業に必要な時間やコストも増加します。重複ファイルや一時ファイル、利用されていない古いデータなどが残っているケースも少なくありません。移行前に不要なデータを整理することで、移行対象を最適化し、作業時間やコストの削減につながります。
④アクセス権限を整理する
更改は、長年の運用で複雑化したアクセス権限を見直す好機です。移行前後でアクセス権やファイル数、タイムスタンプなどを正しく引き継げるよう、現在の権限設定やEveryone権限の有無などを事前に整理しておきます。
⑤外部共有の運用ルールを確認する
取引先や協力会社とのファイル共有方法も確認しておきたいポイントです。メール添付やUSBメモリによる受け渡しを継続している場合は、情報漏えいや誤送信のリスクが残ります。アクセス権限や有効期限を設定できる共有リンクなど、安全な共有方法への移行もあわせて検討しましょう。
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⑥バックアップ方式と復旧手順を検証する
ランサムウェアでは、バックアップデータそのものが暗号化されるケースも報告されています。従来の「3-2-1ルール(3つのコピー・2種類の媒体・1つのオフサイト保管)」に加え、不変(Immutable)ストレージを活用する「3-2-1-1-0ルール」の考え方も参考になります。バックアップを取得するだけでなく、復元テストを実施し、確実に復旧できることまで確認しておくことが重要です。
⑦ランサムウェア対策の状況を確認する
近年のランサムウェアは、VPN機器などを侵入口として社内ネットワークへ侵入し、サーバーだけでなくネットワーク上のデータまで暗号化するケースがあります。そのため、ファイルサーバー単体だけでなく、VPN機器のファームウェア更新状況や多要素認証(MFA)の導入状況など、関連するセキュリティ対策もあわせて確認しておきましょう。
⑧移行方式とダウンタイムを見積もる
データ移行に伴う業務停止(ダウンタイム)を最小限に抑えるため、移行方式やスケジュールを事前に検討します。一括移行だけでなく、差分コピーやグループ単位での段階的な移行も視野に入れ、週末や夜間など業務への影響が少ない時間帯で作業を完了できるか、リハーサルを含めて確認しておくことが重要です。
⑨クラウドストレージ移行の要否を判断する
オンプレミスを継続するか、クラウドストレージ(以下、クラウド)へ移行するかは、「TCO(総保有コスト)」「セキュリティ」「自社の運用体制」の3つの観点から総合的に判断します。初期費用だけでなく、今後の運用保守コストやリモートアクセスの必要性も踏まえて比較することが重要です。
特に、以下のような課題がある場合は、単純に既存サーバーを入れ替えるだけでなく、クラウド移行も比較検討するとよいでしょう。
● 拠点や現場から社内ファイルへアクセスする機会が増えている
● 取引先や協力会社とのファイル共有が多く、外部共有の管理に不安がある
● サーバーの保守・障害対応・容量増設が情シス部門の負担になっている
● ランサムウェアや災害時のバックアップ・復旧体制を見直したい
● 退職者アカウントやアクセス権限の棚卸しを更改のタイミングで整理したい
これらに該当する場合は、オンプレミス環境をそのまま更新するだけでなく、クラウドストレージを含めて比較することで、運用負荷やセキュリティ、外部共有のしやすさを総合的に見直しやすくなります。
また、すべてのデータをクラウドへ移行する必要はありません。大容量で頻繁に編集するCADデータなどはオンプレミス(NAS)に残し、一般文書や拠点間で共有するデータはクラウドで管理するといった、ハイブリッド構成も有力な選択肢です。
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⑩移行後の運用体制と責任分担を明確にする
更改後は、新しい環境に合わせたデータ管理ルールや運用体制を整備することも重要です。各部門や拠点ごとに異なる運用が続くと、情報システム部門による一貫したセキュリティ管理や監視が難しくなります。更改を機に、一元管理できる体制を整え、責任範囲やセキュリティポリシーを明文化しておきましょう。
ここまでのチェック項目を確認するなかで、保守対応や容量管理、外部共有、バックアップ体制などに課題を感じた場合は、オンプレミス環境の更改だけでなく、クラウド移行も選択肢として比較検討するとよいでしょう。
ファイルサーバー更改にあわせて見直すべきポイントを整理したい方は、「続・さよならファイルサーバー」もあわせてご確認ください。
クラウド移行を検討する企業が増えている理由
チェックリストを通じて現状を整理した結果、オンプレミス環境を再構築するだけでなく、クラウド(SaaS)への移行を選択肢として検討する企業も増えています。その背景には、主に次の3つの理由があります。
社内インフラの運用負荷を軽減できる
オンプレミス環境では、ハードウェアの老朽化への対応や障害発生時の保守、容量増設のたびに機器の調達や設定作業が必要になります。一方、クラウドではハードウェアを管理する必要がなく、利用状況に応じて容量やユーザーを柔軟に追加できるため、運用負荷の軽減につながります。
安全かつ効率的に外部共有できる
取引先や協力会社とのファイル共有では、クラウドの共有リンク機能を利用することで、パスワード保護や有効期限の設定、アクセス権限の管理などを行えます。メールへの大容量ファイル添付やUSBメモリによる受け渡しと比べて、安全性と利便性の向上が期待できます。
BCP(事業継続計画)やデータ保護を強化できる
オンプレミス環境では、災害や停電、ランサムウェアなどのインシデントが発生すると、業務継続に影響を及ぼす可能性があります。クラウドは、データセンターで冗長化された環境にデータを保管できるサービスも多く、リモートワーク環境からのアクセスにも対応しやすいため、BCP対策やデータ保護の強化につながります。
移行前に確認したい資料
ファイルサーバーの更改は、一度実施すれば終わりではなく、その後の運用まで見据えて計画を立てることが重要です。特に、オンプレミスを継続するのか、クラウドへ移行するのかを検討する際は、運用負荷や外部共有、権限管理、バックアップなどを総合的に比較する必要があります。
ファイルサーバー更改を機に、オンプレミス継続だけでなくクラウド移行も含めて検討したい方は、「続・さよならファイルサーバー」をぜひご活用ください。ファイルサーバー運用で見直すべきポイントや、クラウド移行を検討する際の考え方を整理できます。
▼関連資料
まとめ
ファイルサーバー更改は、OSやハードウェアを更新するだけでなく、データ管理やセキュリティ、運用体制を見直す重要な機会です。
更改を成功させるためには、保守期限やデータ容量だけでなく、アクセス権限や外部共有、バックアップ、ランサムウェア対策なども含めて事前に確認し、自社に適した移行計画を立てることが重要です。また、更改を機にクラウドへの移行を検討することで、運用負荷の軽減や安全なファイル共有、BCP対策の強化につながる可能性があります。
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